アントワープ大学は、ベルギー王国アントワープ市内の3つの教育機関を起源とし、1970年代初頭に連合大学となり、2003年に3者が合併して発足した比較的新しい大学です。今回のJDプログラムの責任学科である理学部物理学科には、EMAT(Electron Microscopy for Materials Science)と呼ばれる世界屈指の電子顕微鏡研究拠点があります。一方、九州大学にもEMATに匹敵する電子顕微鏡施設が複数あり、約50年に及ぶ歴史を経て国内外有数の電子顕微鏡研究拠点に発展してきました。こうした背景から、本学とアントワープ大学は電子顕微鏡学に関する学術交流を以前から行ってきました。特に、平成24年度に採択された日本学術振興会頭脳循環プログラムにおける若手研究者と大学院生の留学と国際共同研究をきっかけに、JDの骨子が立案され、この度のJDプログラムの設立に至りました。
世界大学ランキングにおいてアントワープ大学と九州大学は拮抗しています。両大学は、物質・材料系の研究分野で卓越した国際競争力を有し、かつ、異なる研究の方向性や方法論を展開しています。この両者が協力すれば、協奏的・相乗的かつ相補的な教育研究効果が期待できると考えています。 このJDプログラムでは、学生が国際共同研究に参画して成果を自ら公表することを履修条件としており、講義や演習による単位の取得は求めていません。これは、学生が相手大学との共同研究に身を投じる時間を最大化させることが、このプログラムの趣旨である高度なナノ構造解析の知識と技術、関連課題の解決能力、国際的活動能力を高めるのに最も効率的と考えるためです。 このJDプログラムは多くの企業から高い関心を集めていることが事前アンケートで判明しています。次世代を担う皆さんの研究キャリアパスとして、JDプログラムへの入学をお待ちしています。
地球規模で深刻化している環境・エネルギー問題は、20世紀後半からの世界的な人口増加や経済発展、化石燃料の枯渇などが原因でますます深刻になっています。これらの問題を解決し、持続可能な国際社会を実現するためには、新エネルギーの創生や貯蔵、水素利用、環境浄化などに役立つ革新的な物質・材料の研究・開発が不可欠です。その中心となるのが、脱炭素化社会の実現に向けたナノ材料・ナノ科学です。この分野で国際的に活躍する優れた研究人材の育成が求められています。 このような状況の中、九州大学大学院総合理工学府(IGSES-Kyushu-U)とアントワープ大学理学部(SC-UAntwerp)は、ナノ材料・ナノ科学を基盤とし、環境・エネルギー問題を解決する革新的な物質・材料の研究・開発を先導できる国際性豊かな理工系リーダーを育成することを目指して「九州大学・アントワープ大学総合理工学国際連携専攻(博士後期課程)」を設立しました。
アントワープ大学について
アントワープ大学は、ベルギー王国アントワープ市に本拠を置く、ベルギー国内でも有数の主要大学です。Times Higher Education 2023ではベルギー国内3位、世界131位、QS World Ranking 2024ではベルギー国内5位、世界248位と、国際的な認知度の高い大学です。連携先であるSC-UAntwerpのNCE(Nanolab Center of Excellence)は、6つの研究グループで構成されており、その中でもEMAT(Electron Microscopy for Materials Science)は、電子顕微鏡に関連する世界をリードする施設として知られています。
定員:2名/年
この専攻では、理学と工学の両面から革新的な材料開発を通じて、持続可能な国際社会の実現を目指します。ナノ材料・ナノ科学の基盤となる構造解析や制御に関する諸問題に対し、総合的かつ学際的な視点から創造的な解決策を提案・実行できる国際性豊かな自立した学術研究者および高度専門職業人を育成することを目指しています。
※九州大学の学生向け
1年次:研究計画書の作成と共同セミナーでの発表
2年次:アントワープ大学に滞在し、半年間の国際共同研究
3年次:博士論文審査・公聴会